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  • 建築基準法に物申す(5)-容積緩和①  建築関連での独り言 / 建築基準法に物申す
    1207-2016

    「建築基準法に不満あり」と、実務を経験したことのある人は多かれ少なかれ誰しも感じていることでしょう。
    という事で、今回は「容積緩和」について。

    大きな事故や事件が発生する度に避難や設備・構造の規制が強化されますが、大衆迎合的思考から緩和される部分も多くあります。
    時の政権(大臣?)の人気取りという側面もあるかもしれませんが理由は何であれ、民間の建築は経済活動の一つですから何事も緩和されるのは歓迎です。

    集団規定の大部分を撤廃、又は大幅な緩和をすればもの凄い景気刺激策になると思いますが、まさかそんなことは不可能でしょう。自分達の権威が失墜しますからね(笑)
    そこで国交省は上からつつかれるたびに渋々緩和策を小出しにします。
    毎年のように建築基準法改正が行われるのはその為です。

    例えば共同住宅の共用部分の容積不算入です。
    土地の値段が上がり過ぎ、建設費用を加味すると売れる値段でマンションを供給出来ないか、仮に供給しても一般消費者には手が出せずに結果として市場が冷え込むことになります。
    そこで容積を緩和し販売面積が増えれば販売価格も下がるのでマンション業界が活性化する、という目論見です。
    超概算ですが、中廊下・中階段・エントランスホール・エレベーターホール等が容積不算入になると約10%~20%延べ床面積が増えます。増えた分建設費もかさみますが差し引きして約5%~10%位はマンション価格が下がるのではないでしょうか(あくまでも個人的な概算です)

    先ほど廊下・階段・エントランスホール・エレベーターホール等と書きましたが、これには何故かエレベーターシャフト(昇降路)が含まれていません。
    「共同住宅の共有部分の廊下や階段などの床面積を、容積率から除外する」改正は1997年ですが何故含まれていなかったのか当時から多くの人が疑問を持っていました。

    平成26年になってようやくエレベーターの昇降路(シャフト)も容積緩和の対象になりました。しかも全ての建物が対象です。
    エレベーターの昇降路なんて何もないただの吹き抜けですよ。廊下や階段が緩和になった段階で同時に緩和すべきものなのに17年も放っておく意味が全く判りません。
    まあこうした場当たり的な法改正がいかにも建築基準法らしいですね(皮肉ですよ国交省さん……)

    容積緩和には他にも、駐車場等の緩和、住宅部分の地下緩和、防災・減災施設の容積率不算入、老人ホーム等云々など数多くありますが、いかにも場当たり的と思わせる痕跡がこの書類です。

     ↓ 以下は約20年前(1996年)頃の確認申請書の一部です。
    第3面(クリックで拡大します)

      

    これが、最新のものとなると ↓ こんな風に変わっています。
    同じく3面(クリックで拡大します)

      

    延べ面積の項目ですが、20年前は駐車場と住宅部分の2項目しかありませんが、最新のものはなんと10項目もあります。

    例えば、共同住宅の一部に老人ホームと駐車場があり、更にエレベーターがあって地下に貯水槽や備蓄倉庫、蓄電設備、自家発電設備がある場合はそれぞれ面積別けして1/3か1/5かを判定して……。と、もの凄く複雑な計算を強いられることになります。

    事務手続きが煩雑になるだけならまだしも、後々の監理はどうするんだろう?
    国交省は通達を出して、特定行政庁に台帳を整備して建築後の転用を防止しろと言ってますが、こんなにがんじがらめにしちゃうと10年後、20年後に変更確認申請を出さなきゃいけなくなったときに適正に処理出来るのかどうか怪しいものです。

    他にも容積緩和は突っ込みどころ満載ですが、続きは以降に……
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    建築基準法に物申す(4)-日影規制  建築関連での独り言 / 建築基準法に物申す
    1204-2016

    「建築基準法に不満あり」と、実務を経験したことのある人は多かれ少なかれ誰しも感じていることでしょう。
    という事で、今回は「日影規制」について。

    最初に引用。
    第五十六条の二  別表第四(い)欄の各項に掲げる地域又は区域の全部又は一部で地方公共団体の条例で指定する区域(以下この条において「対象区域」という。)内にある同表(ろ)欄の当該各項(四の項にあつては、同項イ又はロのうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)に掲げる建築物は、冬至日の真太陽時による午前八時から午後四時まで(道の区域内にあつては、午前九時から午後三時まで)の間において、それぞれ、同表(は)欄の各項(四の項にあつては、同項イ又はロ)に掲げる平均地盤面からの高さ(二の項及び三の項にあつては、当該各項に掲げる平均地盤面からの高さのうちから地方公共団体が当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)の水平面(対象区域外の部分、高層住居誘導地区内の部分、都市再生特別地区内の部分及び当該建築物の敷地内の部分を除く。)に、敷地境界線からの水平距離が五メートルを超える範囲において、同表(に)欄の(一)、(二)又は(三)の号(同表の三の項にあつては、(一)又は(二)の号)のうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定する号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない。ただし、特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合においては、この限りでない。


    1976年の建築基準法改正で導入された条文です。

    わたしが新卒で設計事務所に入社したのが1978年ですからその少し前という事になります。
    この文章を読んだだけでは日影図なんて書けるわけがないですから、当然解説本とかがあったはずです。
    しかし、当時の先輩方はまだ解説本を読んでいなかったと見えて、条文の中にある「道の区域内にあつては、午前九時から午後三時まで」の〝道〟を〝みち〟と思っていたそうです。
    本当は〝北海道〟の〝どう〟です。
    つまり、北側に道路がある場合は9時から3時までと勘違いしていたわけですね。
    今となっては笑い話ですが、別表4にも「道の区域内にあっては」と書いてあるし、確かに初めて目にする人は間違うかもしれません。道の前に北海の2文字を付け足すだけなんだから、紛らわしいことをしないでもらいたいと思いますよね。建築基準法って不親切だな~

    この条文、簡単に解説すると、中高層建築が数多く建ち始め、いわゆる日照権訴訟が頻発したために導入されたものですが、その基準を守っているからといって裁判等に勝てるかというとそうでもないようです。
    歴史も権威も段違いの民法で定められた基準ならば判例に従うのでしょうが、あちこちでザル法と揶揄されている建築基準法ですからね裁判官も事案毎に判決を出さざるを得ないのでしょう。

    前置きが長くなりましたが、この条文の具体的な中身は、敷地境界から、5m、10mのラインを設定してそのラインを越えて一定以上の日影を生じさせないように建築物の形態を制限するものです。
    先ほどの〝道の区域〟というのは北海道は緯度が高く影が長く伸びるので8時~16時を9時~15時に縮めていますし、そのぶん規制も0.5時間~1時間短くしています。

    本来、決め事というのは平等でなければならないと思っていますが、「採光」の件と同じく、この日影規制も用途地域によって日影を生じさせない時間が違います。
    しかも日影は地域によって太陽高度が違うのに、上で述べた〝道の区域〟だけ区別して九州はしていません。
    区別しないというのは逆の意味で差別していることになります。

    住んでいる場所が違うんだから良いんじゃないの? と思われるかもしれませんが、建築基準法 第1条の財産の保護という法の精神に則ると明らかに矛盾しています。

    例えば、第1種低層住居専用地域(3h-2h)に高さ10mの建物を建てた場合について、日本の北に位置する青森と南に位置する鹿児島でシュミレーションしてみます。
    (北海道は条件が違うので除きました)

    以下は青森の等時間日影図(北緯40.80°)
    建物中心の真北方向10m地点(A点)で日影時間は2時間10分
              5m地点(B点)で日影時間は3時間02分
    ※2時間の影を生じさせる線と3時間の影を生じさせる線がそれぞれ10mと5mラインを超えています。

      


    以下は鹿児島の等時間日影図(北緯32.00°)
    建物中心の真北方向10m地点(A点)で日影時間は0分
              5m地点(B点)で日影時間は2時間48分
    ※2時間の影を生じさせる線と3時間の影を生じさせる線がそれぞれ10mと5mラインを超えていません。

      


    明らかに影の伸び方が違うのが判ると思います。
    同じ広さの敷地に同じ大きさの建物を建てようとしたら青森は許可にならず、鹿児島は許可になります。
    北側隣地の人にとっても建築主にとっても差別しているという事になります。


    ついでなので札幌も書いてみました。
    9時~15時(北緯43.05°)
    建物中心の真北方向10m地点(A点)で日影時間は2時間13分
              5m地点(B点)で日影時間は3時間04分

      

    日影になる時間はA点B点共に青森と大差ありませんが、確認申請上は2h-1.5hなので完全にアウトで不許可です。
    日影規制だけをとってみると、建築基準法は建て主にとっては北に行くほど厳しくなりますが、逆に近隣住民にとっては有難いという結果になりました。

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    建築基準法に物申す(3)-2項道路  建築関連での独り言 / 建築基準法に物申す
    1130-2016

    「建築基準法に不満あり」と、実務を経験したことのある人は多かれ少なかれ誰しも感じていることでしょう。
    という事で、今回は「2項道路」について。

    建築基準法はザル法か?で少し取り上げた「2項道路」ですが、自身の考えを述べさせていただきます。
    建築と道路とは切っても切り離せない関係です。
    なぜなら、法第43条第1項に、建築物の敷地は「道路に2メートル以上接しなければならない」とあるからです。
    道路といってもいろんな道路があり、登記上は公衆用道路や公道であっても建築基準法の道路に該当しないものに接していても建築は出来ません。

    建築基準法42条によると、

    この章の規定において「道路」とは、次の各号の一に該当する幅員四メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、六メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。

    となっていて、次の各号の概略は
     ① 道路法による道路
     ② 都市計画法等による道路
     ③ 昭和25年11月23日に存在していた道路(幅員4m以上)
     ④ 事業執行予定の道路
     ⑤ 位置指定道路
     (以上、42条1項)
     ⑥ 42条第2項の道路(幅員4m以下)
    となります。

    かなり複雑ですよね。
    でも、建築確認申請だけならば以上の6種類の道路の区別さえしっかり把握してさえいれば問題はないのですが、開発行為等が関係してくると私道やつぶれ水路(公図上は水路だけれど道路形状になっている)等も絡んでくるので更に複雑になってきます。

    あっ!、それから道路ではありませんが、「建築基準法第43条ただし書」というものもあります。

    第43条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。 以下省略

    この条文の「ただし」以降には「道路」の「ど」の字もありませんが、建築関係者間では「ただし書道路」と呼ぶ場合もあります。

    「その敷地の周囲に広い空地~~云々」、というのを読んでも一般の人には何の事か判らないと思いますが、簡単に言うと救済措置です。
    上記の「⑥ 42条第2項」は昭和25年以前から存在する道が前提ですが、何らかの理由でそれに当てはまらない道で、現に家が立ち並んでいる場合などに許可が出ます。
    あくまでも個人的な感想ですが、建築確認を受けないで建てられた違法建築だけれど、あまりにも数が多いので再建築不可にすると影響が大きすぎる為かと……。(あくまでも推測です)

    かなり脱線しましたが、今回は「2項道路」でしたね。
    話を戻して、今までの話をまとめます。

    基準法上の道路は4m以上必要で、4m以下の道路は42条2項により、中心から2m敷地を後退させなければなりません。(以下、コピペ)

    2  この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(前項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満でがけ地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該がけ地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。


    この条文の趣旨は、家を建て替えるときに道路境界線を後退させ、その道路に接する家(向こう三軒両隣のそのまた両隣)が全て建て替えを終わる頃には自然と道路が4mになっている、というものです。
    ある意味素晴らしい条文です。
    しかし、悲しいかな、私はこの基準に従って自然発生的に4mに広がった道を見たことがありません。

    というのも、この条文は塀を含む建築物を制限するものであり、敷地の所有権はそのまま変わらないからです。
    強制的に公衆用道路として登記させるとかが出来れば別ですが、第1条で、国民の財産の保護を図り~~云々、とうたっている建築基準法にはしょせん無理な相談なのです。

    後退した部分を駐車場として利用しても花壇としての利用も法では制限されません。
    建築物の敷地には含めないと言われても自分の土地であることには変わりないので、進んで道路状に整備する人などたぶんいません。
    完了検査が終わり検査済証の交付を受けた段階で、舗装して駐車場になるか塀を設けて自分の土地だと自己主張するかのどちらかでしょう。
    まあ、これもザル法と揶揄される原因の一つでしょうか(苦笑)


    長い記事になりましたがもう少し続けます。
    2項道路といえば、現況幅員2.7m(9尺)の道路が多いのは何故だろうと前々から疑問に思っていました。
    6尺(1.8m)というのもありますが、9尺の方が圧倒的に多いです。
    最近面白い資料を見つけたので紹介します。

    「建築法規最低道路幅員規定における4m規定の由来に関する研究」というものです。

    ところどころを抜粋してみます。

    現在日本の旧市街地においては、いわゆる木造密集市街地が存在する。これらの地域では、未更新の建物が多く存在する。

    最低道路幅員規定が4mになった経緯については、不明瞭な部分が多い。最低道路幅員規定が4mになったのは、建築基準法の前身である市街地建築物法(以下市建法)が昭和13年に改正されたときである。
    そこで、本研究では、当時の論説誌、議会議事録、統計資料などを対象に文献レビューを行い、その経緯を極力明らかにしようと試みた。

    江戸時代では、路地と道路を区別する考え方が存在したことが分かっている。なお、道路とはなお、道路とは60間×60間の街区を形成し、おおむね五間ないし三間の幅員が最低限とされ、路地とは裏長屋に通じる生活道路で、6尺から9尺程度が基準幅員であった。
    そして、道路については道路法をはじめとする公道の理論に受け継がれていき、路地・地区内の生活道路については私道として建築法規のみが扱う形になっていく

    1907(明治40)の警視庁長屋構造制限第3条1項2号で長屋は「幅9尺以上の道路に面せしむること」とされ、その後、1919年に制定された全国レベルの統一的な建築法規である市建法でも、9尺と定められる。
    この中で、第26条に「本法に於て道路と称するは幅員9尺以上のものを謂ふ」と定められている。この9尺の規定について、大まかに二つの定説が存在する。一つは、大河原晴彦(82)による1919年当時の交通形態から、・自動車が一台通行できる広さ、・人力車・荷馬車などが行き来できる広さ、これら二つの条件を満たすラウンド・ナンバーではないかとする考え方、もう一つは、加藤仁美らによる衛生に根拠を求める説がある。

    1937年の廬溝橋事件をきっかけに日中戦争に突入し、戦時体制に置かれることになる。そして、37年には防空法が施行される。

    昭和13年には市建法が再び改正される。改正の要点は、……

    12条の改正を受けて設置された規定が、各戸防衛主義に基づく防空建築規則である。また、この改正によって第26条も改正され、最低道路幅員が4mという規定になる


    昔の法律での道路幅は9尺だったんですね。
    自動車が一台通行でき、人力車・荷馬車などが行き来できる広さというんだからびっくりです。
    今の時代の尺度で考えると狭い気がしますが、少し前までは徒歩か籠で行き来していたんだから9尺でも広かったのかもしれませんね。
    しかも、その後の防空建築規則で4mになったなんて2重にびっくりです。
    防空というからには、空爆を想像してしまいますが、道路を4mにしたからと言って延焼を防げるとは思えないし、無いよりはましとでも思っていたんでしょうかね。

    興味がある方は
    http://ud.t.u-tokyo.ac.jp/research/thesis/assets/motti_hashimoto_summary.pdf
    で全文を見られます。
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    建築基準法に物申す(2)-階段  建築関連での独り言 / 建築基準法に物申す
    1129-2016

    「建築基準法に不満あり!」と、実務を経験したことのある人は多かれ少なかれ誰しも感じていることでしょう。
    という事で、今回は「階段」について。

    建築基準法には集団規定と単体規定があります。
    集団規定は他者との関係、もっと広く考えれば都市全体に係るのもであるから、個人的には単体規定よりも重要だと考えます。
    単体規定が重要ではないと断定するつもりはありませんが、余計なお世話的な法文が少なくありません。
    階段の規定もその内の一つだと思います。
    (避難階段や直通階段の規定は避難規定なのでここでは除きます)

    不特定多数が利用する建物は他の法律、例えばバリアフリー法などで段違いに強化されているし、建築基準法で規制されるとすれば住宅や小規模な事務所建築のみとなっています。
    そういった小規模な建物は設計者の裁量に任せるべきです。
    特定の人物しか利用しないわけだし、使い勝手を考えるのは使用者であるべきです。
    百歩譲って個人住宅以外は仕方ないとして、建築士以外でも設計できる100㎡以内の木造住宅などは、単体規定のお節介的な条文は削除すべきと思います。

    前置きが長くなりましたが、本題は建築基準法の階段規定の誤りの指摘です。

    建築基準法施行令 第二十七条 では
     第二十三条から第二十五条までの規定は、昇降機機械室用階段、物見塔用階段その他特殊の用途に専用する階段には、適用しない。
    とあります。

    つまり、昇降機機械室(エレベーター機械室?)への専用階段は自由に決めていいよ、と読めます。

    ところが、同じ施行令の第百二十九条の九 では
     エレベーターの機械室は、次に定める構造としなければならない。
     一 (省略)
     二 (省略)
     三 (省略)
     四 (省略)
     五  機械室に通ずる階段のけあげ及び踏面は、それぞれ、二十三センチメートル以下及び十五センチメートル以上とし、かつ、当該階段の両側に側壁又はこれに代わるものがない場合においては、手すりを設けること。

    とあります。

    これを矛盾と言わずして何と言うのか。
    第二十七条では、昇降機機械室と書いてあり、第百二十九条の九ではエレベーターの機械室と書き別けています。
    「昇降機機械室」と「エレベーターの機械室」は別物だとでも言いたいのでしょうか?
    国交省の言い訳に使う材料としか思えません。

    ちなみに第百二十九条の九のけあげ二十三センチ、踏面十五センチは第二十七条での住宅の階段と同じ数値です。
    一度お許しを与えて後で強化するという紛らわしい書き方をしている条文は他にもあります。

    わざとこういう書き方をして建築にたずさわる人々を混乱させているとしか思えない、と考えるのは法律を作成する国交省のエリート官僚に対するひがみ根性なのでしょうか?(苦笑)

    頻繁に法改正している建築基準法なのだから、第二十七条の『昇降機機械室用階段』の九文字を削除するのは簡単だと思うのですが、いかがでしょうか?

    蛇足ですが、20年ほど前から中規模建物ではマシンレスエレベーターが主流になり、屋上に突き出た『昇降機機械室』は見かけなくなりました。
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    建築基準法に物申す(1)-採光  建築関連での独り言 / 建築基準法に物申す
    1120-2016

    「建築基準法はザル法」と、実務を経験したことのある人は多かれ少なかれ誰しも感じていることでしょう。
    という事で、今回は「採光」について。

    そもそも採光とは何ぞや、という基本的なことをぐぐってみると、
    【室内に光線(おもに日光)を導き入れて明るくすること。】だそうです。

    光ってんだからふつうは日光と思いますよね。
    ところが我が神聖なる建築基準法では真北向きの窓でも採光が取れるんです。
    まあ、簡単に言えば外気に面してれば太陽が見えなくても良いことになります。
    慈悲深いですね(笑)
    ただし、そこにはある程度の空間が必要になります。
    道路、公園、水路等でも可ですが、原則は自分の敷地内です。
    その「ある程度」の距離を決めるのが「採光計算」です。

    では、どのくらい境界線から離せばいいか。
    我が神聖なる建築基準法では懇切丁寧に解説してくれています。

    しかし、親切すぎるのは良いのですが、差別までしているんですね、これが。

    建築基準法 第一条では、
    「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」
    とあります。

    最低の基準で国民の健康の保護を図っている筈なのに、住居系地域、商業系地域、工業系地域、それぞれに住む人達を差別と言うか区別しています。
    どういう区別かというと、商業系地域、工業系地域は住居系地域に比べて基準が緩くなっています。
    つまり、建築基準法的に解釈すれば、健康的ではないという事になります。

    どういう意図があって区別しているのでしょうか?
    駅に近く、人口の密集している商業系地域に住んでいる人たちは健康に留意しなくていいという事なのでしょうか?
    それとも、地価の高い地域に住むのだから多少のリスクは払えとでも?

    差別の可否は別にして、採光基準の厳しい住居系地域が基準の緩い商業系地域よりも健康的か? と聞かれれば関係ないと断言できます。建物高さの高いマンションでは多少居住環境が良いという程度で、戸建て住宅などは全く関係ないでしょう。


    そういえば、縁側に面する部屋は、窓面積に0.7を乗じますが、マンションの開放廊下にも適用している自治体がありました。東京の某板橋区です。
    30年近く前の私が若かった頃、まだ採光補正係数という考え方が無かった時代のことです。当然、民間の確認検査機関もありませんでした。
    某板橋区では歴代の建築主事がその考えを引き継いでいて、マンション設計に苦労した覚えがあります。
    採光を確保するために開放廊下に面する部屋の床面積を小さくせざるを得なかったのですから本末転倒というものです。
    今はどうなっているんだろう? 法改正によって採光補正係数が使えるようになったから多少は楽になったのかな?
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    4号物件の落とし穴-構造編   建築関連での独り言
    1117-2016

    建築関係者以外の方への説明を最初に行いますと、4号物件とは建築基準法第6条1項4号に該当する建物で、わかりやすく大雑把に分類すると、木造2階建までの住宅という事になります。

    4号物件では、建築士の設計によるものは建築確認で特例が認められていて、政令で定められた規定は審査しない事になっています。
    審査しないからと言って法律を守らなくても良いかというとそうではありませんが、実際は法令違反があるかもしれません。
    あるかも、と微妙な言い回しをしたのには理由があって、設計者として意識的に違反したわけではなく、結果的に違反だったという事が多々あると想像されるからです。

    例えば、採光という決まりがあります。
    採光とは、居住等で継続的に使用する部屋を居室と定義し、採光に有効な開口を確保せよという内容ですが、4号物件では審査しないので検討書は不要という事になります。
    検討書の内容まで書くと長くなるので此処では割愛しますが、審査しない検討書をわざわざ作成する設計者は少ないと思います。(以前、計算結果がギリギリだったので確認申請に添付したら、不要だから削除してくれと言われました)

    例えで取り上げた採光は、他人に迷惑をかける内容でもなければ命に係わる問題でもありませんが、構造関係となるとそうはいきません。
    木造の建物強度は壁を設けるか筋かいを入れた軸組みで決まります。
    建築基準法では、その軸組みを釣り合い良く配置いなければならないと記してあり、計算方法も示してありますが、その計算書も特例扱いで審査しない事になっています。
    さすがに筋かい計算は居住者の生命に係る問題ですから、いくら4号物件だからと言って計算しない設計者はいないと思いますが(信じたいです)、そこに大きな落とし穴があるのです。

    先の熊本地震では多くの木造建物が全壊、又は半壊しました。
    基準法改正後に建てられた比較的新しい建物でも被害が出ているという事で、国交省でも調査するというニュースがありました。(もうおこなっているのかもしれませんが正式な報告書は読んでいません)
    そのニュースの中で興味深いコメントがありました。
    現地を調査した専門家の話として、「筋交いの向きのバランスが取れていない」という事を紹介していました。
    筋交いというのは壁の中に入れる斜め材です。
    右肩上がりの筋かい|/|と、左肩上がりの筋かい|\|をバランス良く入れる必要がありますが、倒壊した建物はどちらか一方にだけ集中していたという事です。

    続きはこちらでどうぞ
    http://matsui.o.oo7.jp/etc/4gou.html



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