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建築基準法に物申す(5)-容積緩和①  建築関連での独り言 / 建築基準法に物申す
1207-2016

「建築基準法に不満あり」と、実務を経験したことのある人は多かれ少なかれ誰しも感じていることでしょう。
という事で、今回は「容積緩和」について。

大きな事故や事件が発生する度に避難や設備・構造の規制が強化されますが、大衆迎合的思考から緩和される部分も多くあります。
時の政権(大臣?)の人気取りという側面もあるかもしれませんが理由は何であれ、民間の建築は経済活動の一つですから何事も緩和されるのは歓迎です。

集団規定の大部分を撤廃、又は大幅な緩和をすればもの凄い景気刺激策になると思いますが、まさかそんなことは不可能でしょう。自分達の権威が失墜しますからね(笑)
そこで国交省は上からつつかれるたびに渋々緩和策を小出しにします。
毎年のように建築基準法改正が行われるのはその為です。

例えば共同住宅の共用部分の容積不算入です。
土地の値段が上がり過ぎ、建設費用を加味すると売れる値段でマンションを供給出来ないか、仮に供給しても一般消費者には手が出せずに結果として市場が冷え込むことになります。
そこで容積を緩和し販売面積が増えれば販売価格も下がるのでマンション業界が活性化する、という目論見です。
超概算ですが、中廊下・中階段・エントランスホール・エレベーターホール等が容積不算入になると約10%~20%延べ床面積が増えます。増えた分建設費もかさみますが差し引きして約5%~10%位はマンション価格が下がるのではないでしょうか(あくまでも個人的な概算です)

先ほど廊下・階段・エントランスホール・エレベーターホール等と書きましたが、これには何故かエレベーターシャフト(昇降路)が含まれていません。
「共同住宅の共有部分の廊下や階段などの床面積を、容積率から除外する」改正は1997年ですが何故含まれていなかったのか当時から多くの人が疑問を持っていました。

平成26年になってようやくエレベーターの昇降路(シャフト)も容積緩和の対象になりました。しかも全ての建物が対象です。
エレベーターの昇降路なんて何もないただの吹き抜けですよ。廊下や階段が緩和になった段階で同時に緩和すべきものなのに17年も放っておく意味が全く判りません。
まあこうした場当たり的な法改正がいかにも建築基準法らしいですね(皮肉ですよ国交省さん……)

容積緩和には他にも、駐車場等の緩和、住宅部分の地下緩和、防災・減災施設の容積率不算入、老人ホーム等云々など数多くありますが、いかにも場当たり的と思わせる痕跡がこの書類です。

 ↓ 以下は約20年前(1996年)頃の確認申請書の一部です。
第3面(クリックで拡大します)

  

これが、最新のものとなると ↓ こんな風に変わっています。
同じく3面(クリックで拡大します)

  

延べ面積の項目ですが、20年前は駐車場と住宅部分の2項目しかありませんが、最新のものはなんと10項目もあります。

例えば、共同住宅の一部に老人ホームと駐車場があり、更にエレベーターがあって地下に貯水槽や備蓄倉庫、蓄電設備、自家発電設備がある場合はそれぞれ面積別けして1/3か1/5かを判定して……。と、もの凄く複雑な計算を強いられることになります。

事務手続きが煩雑になるだけならまだしも、後々の監理はどうするんだろう?
国交省は通達を出して、特定行政庁に台帳を整備して建築後の転用を防止しろと言ってますが、こんなにがんじがらめにしちゃうと10年後、20年後に変更確認申請を出さなきゃいけなくなったときに適正に処理出来るのかどうか怪しいものです。

他にも容積緩和は突っ込みどころ満載ですが、続きは以降に……
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